北精進ヶ滝の話
- 寿秋 横尾
- 4月9日
- 読了時間: 2分
更新日:4月10日
自転車に乗り都内の林道をよく走ったものだ。得体の知れない誰も来ない道をひたすらに走った。林道を走ると林道の終点から登山道が伸びている事に気がつく。もちろん全ての林道の先に登山道があるわけではないのだが、道の終点から伸びる登山道がいつしか気になりはじめ、やがて山に登るようになるのだが、何年もこの趣味をやっているといくら不気味な道を独り占めできたとて、不気味な山や林道よりも見晴らしの良い景色が良いものだと気がつく。林道に至っては花粉対策の大伐採を行いかなりの絶景林道なんてものも結構あるのだが、山にいたっては景色の良い山は必ず多くの人で賑わっており、そこは私の求めている静寂とは無縁の世界である。それでもまだ山で会った人たちと挨拶を交わし話をするのは悪くなかった。8年近く前だったか、山梨の北精進ヶ滝の滝壺を訪れた。滝壺までの高さは120m東日本随一の名瀑と言える。当初の計画では単独で行こうと思っていたのだが、滝壺までの道は先人が木に括り付けたリボンを頼りに道なき道を進み、踏み跡僅かな崖っぷちを歩き沢を渡渉し、最後は巨石を超えていくというかなり危険の伴う道であった。僅かばかりの不安とどうせなら山仲間を誘ってあげようという親切心から、5人のパーティーで挑むこととなった。現地に集合し身支度を整え出発し、正規ルートを途中から外れ道なき道を進んだ。そうして苦労した後に滝壺へとたどり着くのだが、
その景色は言葉では言い表せない程の絶景であった。絶景なのに誰もいない世界。そういう場所がまだまだ日本にもある。勿論そういう場所は大抵危険を伴う場所である。またその景色を誰でも見れるわけではないと言う事が更に心を満たすものであった。
あれから随分と歳月が経ってしまったが、いずれまた訪れてみたい場所である。
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