個人事業主でいるわけ
- 寿秋 横尾
- 3月31日
- 読了時間: 2分
随分と昔だが、専門学校で講師をしている時に学生に先生は会社にして従業員を雇ったりしないんですか?と聞かれた事がある。アパレルでデザインだけを請け負う仕事を長い事やっていて、それは一度も考えたことがない。人を雇うということはその人の人生にある程度責任を持たなくてはならない。収益が有る無しに関わらず給料を払い続けなくてはならない。時には自分の給料を0にしても従業員に払うのは経営者の責任だと思う。私の知り合いには経営者の責任を放棄し、会社の業績の下落と共に従業員の給料はすべてカットし、自分の給料だけは死守している者もいるが、そんな経営者にだけはなりたくないものだ。それになりより、人を雇うと言う事は自由でなくなる。私にはそれが一番大きな理由である。それはさておき、この仕事で生きていくのはそもそもそんなに簡単な事ではない。アパレルのデザインだけを請け負っている以上はそんなに儲かる仕事ではないのだ。例えばメーカーの1ブランドのデザインをある程度請け負ったとしよう。そのブランドが1シーズンごとにどれ程の種類の衣服を店に並べるかということを考えてみれば、簡単に想像がつく。大抵のアパレルは春夏、秋冬で商品を展開するが、1シーズンにそのブランドから30型のデザインを請け負ったとした場合、1型2万円でデザインを請け負っても、私の売上は60万円ほどである。しかも、デザインする機会が春夏、秋冬と年に2回しかない。つまり1ブランドデザインを請け負っても、それだけでは年間120万円にしかならないのである。そう考えていくと、ある程度収入を得ていくには何ブランドの仕事を請け負えば良いのだ?という話になる。しかも商品展開する時期は当然重なるので、仕事を受ける時期も重なる。しかし、重なったところでそれ程多くの仕事をこなせるわけでもない。また同時に仕事のない時期も重なり、完全な季節労働者となるのである。とは言え、上手いこと私は仕事を回している。年がら年中忙しい。一体どうすればよいのか?と聞かれると何となく仕事を選んでいるうちに今の状態になったとしか言いようがないが、同じ状況、良い状況というのは大抵長くても5年ほどしか続かないものである。そんな状況下で当然自分の道連れに誰かを引き込むことなので出来なのである。そして、こんな文書を書きながらもこの先どうやって生きていくのか?を常に考えねばならないのである。
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